原価計算とは?目的や種類、期間、具体例を詳しく解説!

働き方や経済状況が一変した昨今では、「業務の効率化・生産性の向上」を求め従来の方法を見直す企業様が増えました。
業務効率化と生産性の向上は様々なテーマがありますが、広告業の場合は原価計算を見直す企業様が増えています。多忙な業務で原価計算が不足している広告業の企業様でも正確かつスピーディーに原価計算を行う方法をご紹介してまいります。

目次
1.原価計算とは
2.原価計算基準とは
3.原価計算の目的と必要性
4.原価計算期間とは
5.原価計算の種類
6.業界別の原価計算のやり方やポイント
└6-1.製造業の原価計算
└6-2.広告業の原価計算
7.正確かつスピーディーに原価計算を行う方法
8.ADMANは広告業の原価計算が得意な販売管理システム
9.販売管理システムで原価計算を行った事例
10.まとめ

1.原価計算とは

原価計算とは、自社の商品を作成・販売・サービスする際に必要な「原価」を計算することです。
原価は製造業であれば材料費や、現場作業員の人件費などが該当しますが、その他、設備費や電気代、家賃など様々な費用も含まれるので正確に原価を計算することは簡単なことではありません。

広告業などの具体的な「モノ」を扱わない企業においては、
プロジェクトが終了してから赤字が判明するなどの、いわゆるどんぶり勘定のケースも珍しくはなく、正確に原価計算を行い、正しい原価情報を把握することが重要となります。



2.原価計算基準とは

原価計算基準とは

原価計算基準とは、1962年に大蔵省企業会計審議会によって公表された会計基準のことで、以下、全部で5つの章で構成されています。

1.原価計算の目的と原価計算の一般的基準
2.実際原価の計算
3.標準原価の計算
4.原価差異の算定および分析
5.原価差異の会計処理

原価計算基準は公表から60年近く一度も修正を加えられることなく、現在も国内の原価計算精度の実践的なルールとして機能しています。

3.原価計算の目的と必要性

原価計算の目的は、

●経営判断
●業務の見直し
●予算編成
●決算書の作成
●適正な価格設定

主に以上の目的があります。

原価計算とは、自社の商品を作成・販売・サービスする際に必要な「原価」を計算することです。
原価計算を行うことで、商品を販売するにあたりどのくらいの費用(原価)が必要で、利益を得るためにいくら売上が必要なのかを明確にできます。
原価計算は利益を上げる戦略を考えたり、売上目標(予算)を決める重要な役割を果たしています。

広告業においても同様です。広告業の原価は、市場調査やPRなど専門業者へ外注する費用、媒体原価、案件に関わる人件費(労務費)等があります。案件ごと必要な原価を正確に管理することで赤字案件を未然に防ぎ、利益へと繋げられるのです。

会計ルールでは制作に関わる社員の費用は「労務費」で案件に紐づく原価です。営業部や総務経理部のように直接案件に関わらない人の費用は「人件費」で一般管理費として計上されます。
制作にかかわる労務費を案件に紐づけず管理していると、一見黒字案件だけど労務費を足すと赤字案件だった、というリスクがあります。それが1件ではなく、複数あると経営難に陥りかねません。
労務費を管理しないことは、業務効率化の観点からも無駄な業務を見つけられず生産性の低下に繋がります。

例えば、残業が多いAさんがいます。案件の対応と残業理由を勤務表に記載しています。
労務費として案件に紐づけをしていない場合
残業代がAさんに支払いされます。もしかしたら労務費を含めた案件の収支は赤字かもしれません。
労務費を案件に紐づけ管理している場合
どのくらい工数がかかっているのか一目でわかります。Aさんが効率的ではないのか、他に業務を抱えているのか、どこに問題があるのかを見つけ効率的な施策へ転換することができます。

労務費を案件に紐づけ管理することは、赤字を防ぐことや業務の効率化に役立つのです。

4.原価計算期間とは

原価計算期間とは原価計算を行う期間のことで、通常、原価計算期間は1カ月間で、1日から月末までの間に計算を行います。
財務報告の対象となる会計期間は1年間となりますが、原価計算期間は1カ月間という短い期間で設定されています。
その理由としては、「3.原価計算の目的と必要性」ブロックでご説明した通り、原価計算は経営判断や予算編成を行うことを主たる目的としており、経営者や役員などに対して原価管理に必要となる情報がすぐに行き渡らなければ、価格設定などの判断に支障をきたしてしまいます。
ただ例外として、月を跨ぐ長期のプロジェクト計画や長期請負工事などに関しては活動期間に合わせて原価計算期間は長期となります。

5.原価計算の種類

原価計算の種類は主に以下の5種類に分類されます。

1. 標準原価計算

標準原価計算は、製造業やサービス業で広く使われる原価計算方法の一つです。
この方法では、予め設定した標準的な原価(標準原価)を用いて、製品のコストパフォーマンスを評価します。
具体的には、原材料費、労務費、製造間接費などの費目を事前に予測し、これらを基に標準原価を策定します。
実際の生産が行われた後、実際にかかった原価(実際原価)と比較し、差異分析を行うことで、生産プロセスの効率化やコスト削減の指標を提供します。
標準原価計算は、特に大量生産を行う企業において、財務会計や管理会計の重要な部分を形成しています。

2. 実際原価計算(全部原価計算)

実際原価計算は、製品やサービスの実際の生産にかかったコストを計算する方法です。
この計算では、使用した材料の量、かかった労働時間、利用した設備の稼働時間など、具体的な生産データに基づいて原価を計算します。
実際原価計算は、特に製品ごとのコストが大きく異なる場合や、カスタムメイドの製品を扱う企業において重要です。実際原価計算を行うことで、各製品の正確なコストを把握し、価格設定や利益分析に役立てることができます。
また、予算策定や将来のコスト削減策を決定する際の基礎データとしても活用されます。

3. 直接原価計算

直接原価計算は、製品の製造に直接関連するコストのみを計算に含める方法です。
この計算では、直接材料費や直接労務費など、製品の生産に直接かかわる費用のみを原価として計上します。間接費は製品原価には含めず、全体の損益計算書に一括して計上されます。直接原価計算は、特に製品のコスト構造をシンプルに把握したい場合や、変動費と固定費の区分が明確な場合に有効です。
また、損益分岐点分析など、特定の経済分析を行う際にも役立つ計算方法です。

4. 総合原価計算

総合原価計算は、企業の財務諸表において、製品やサービスのコストを計算する方法の一つです。
この計算方法では、製造に関わるすべての費用を集め、製品ごとではなく、一定期間の総合的な原価を計算します。この方式は特に多品種少量生産の場合に適しており、財務会計や管理会計の観点からも重要な役割を果たします。総合原価計算は、間接費を製品に按分して全体のコストを把握し、損益計算書の精度を高めるために用いられます。
この方法で、企業は販売価格の決定や財務状態の改善策を策定する上で重要な情報を得ることができます。

5. 個別原価計算

個別原価計算は、製品やサービスごとに直接費と間接費をそれぞれ計算し、各製品の原価を明確にする方法です。
この計算方式は、特に大量生産や標準化された製品の製造に適しており、製品ごとのコスト管理を行いやすくします。個別原価計算を行うことで、各製品の利益率を正確に把握し、価格設定や販売戦略に活かすことが可能です。
また、製品の原価計算を詳しく行うことで、無駄なコストを削減し、企業全体の利益向上に寄与することが期待されます。

6.業界別の原価計算のやり方やポイント

業界ごとに仕事の進め方や原価の内訳が異なるため、原価計算が難しい場合があります。そのような業種ごとの違いを理解して、適切なやり方で実施することが求められます。

製造業の原価計算

製造業の原価は「製造原価」と呼ばれるもので、材料費、労務費、経費が該当します。

・材料費
材料費とは、製品を製造するために必要な原材料や部品の仕入れ費用のことです。
材料費の中には以下のような種類があります。

原材料費:製品の材料の仕入れコスト
買入部品費:製品に必要な部品などを他社から仕入れるコスト
燃料費:製品を製造するときに使われる燃料のコスト
工場消耗品費:製品を製造するときに使われる消耗品のコスト
消耗工具器具備品費:製造工程で必要な大型工具・機材のコスト

・労務費
労務費とは製品の製造に必要な労力にかかる費用で、以下の種類があります。

賃金:正社員や契約社員など、月給制で製造業に従事する人の給与
雑給:アルバイトやパートタイマーなどの時給制で製造業に従事する人の給与
従業員賞与手当:従業員に支払う賞与や交通費、家族手当など
退職給付費用:将来支払われる退職金として企業が積み立てているお金。製造部門の従業員のみ労務費として計上する。
法定福利費:社会保険料や労働保険料など。製造部門の従業員のみ労務費として計上する。

・経費
経費は、製品の製造に必要な費用のうち、材料費と労務費に含まれない残りすべての費用です。
以下の種類があります。

測定経費:電気代や水道代といった消費量が測定できるもの。
支払経費:支払先が明確な経費のこと。広告宣伝費、通信費、修繕費、雑費などが該当。
月割経費:電話通信料やインターネット代といった数か月にわたって支払う必要がある経費のこと。
発生経費:減価償却費など、金銭の支払いはないものの、経費として計上すべきもの。

・直接費と間接費
さらに、上記を直接費と間接費で分類することができます。
直接費:どの製品をつくるために使われた費用なのかが、わかる費用のこと。
間接費:どの製品をつくるために使われた費用なのか、明確でない費用のこと。

広告業の原価計算

広告業の原価計算も考え方は製造業と同じですが、業態が異なるため仕訳の項目が違います。
まず、広告業はプロジェクト単位で業務行うため、原価管理もプロジェクト単位で考えます。しかし、プロジェクトによって業務内容が異なります。製造業のように同じ製品を一定のコストで大量に製造するわけではないので、原価計算が複雑になります。
さらに、1つのプロジェクトに複数の原価が発生します。その案件で誰が何の業務でどれくらいの時間稼働しているのか、どの業務にどれくらいの業務委託費がかかっているかなど、細かい計算が必要になります。

具体的な原価項目には前述の「労務費」や「経費」のほかに、広告枠の購入や広告運用に必要な「媒体費用」やカメラマン、デザイナーなどの「業務委託費」があります。

しかし、こういった原価をきちんと計算し、案件ごとの収支管理を行うことで、赤字案件を減らし収支をプラスにすることができるようになります。
原価計算システムの導入を検討している場合は、このような業界ことの特徴を踏まえて目的にあったシステムの導入が必要です。

【関連ページ】
>>プロジェクトの原価管理はなぜ必要?課題から原価管理のポイントをご紹介



7.正確かつスピーディーに原価計算を行う方法

多忙な広告業では、原価計算の目的や必要性を理解しているものの、原価計算を行う方法が十分ではないケースがあります。
例えば、Excel管理です。
自由度の高さ汎用性があるというメリットがありますが、その反面、属人性も高まります。
人によって入力の内容が異なったり、そもそも手間を感じて正しく入力をしていなかったり。データが蓄積されても集計に時間が掛かり、最悪データが破損するリスクもあります。
正確性も乏しく、入力の手間や集計を感がるとスピーディーに管理はできません。

そのため、原価計算を行う方法は販売管理システムの導入がおすすめです。
特に案件ごとの収益管理が必要な広告業では、原価計算システム単体より一元管理ができる販売管理システムの方が原価計算を行いやすいです。
販売管理システムのメリットは案件ごとの収益を把握できる点や、集計業務を短縮でき、必要なデータをすぐ見ることができる点です。また、マスタで管理できる項目もあり入力の手間の省略や入力ミスを防ぐことができます。
より正確でスピーディーに原価計算を行うことが可能です。
システムの場合はデータベースにデータを保存されるので、蓄積されたデータを破損するリスクもありません。

デメリットは、システム導入・利用のコストです。また、これまでの運用フローを変える必要が出る可能性もあり安定稼働まで少し時間が掛かるかもしれません。

システム導入には時間やコストがかかりますが、正確な原価計算や収益管理を行うには必要でしょう。

メリット デメリット
Excel管理
  • 自由度が高い
  • 汎用性がある
  • 安価で使い慣れている
  • 入力の手間
  • 入力ミスやデータ改ざんが起きやすい
  • 集計に時間が掛かる
  • 蓄積されたデータが破棄されるリスクがある
販売管理システムの導入
  • 入力の手間が省ける
  • 入力ミスやデータ改ざんを防げる
  • リアルタイムで案件ごとの収益を管理できる
  • 集計や分析が可能
  • 蓄積されたデータをデータベースに保存できる
  • 導入のコストや時間が必要
  • 運用フローを変更する可能性がある

【関連ページ】
>>Excelでの業務管理はもう限界、、、システムへ移行を悩んでいる人へ
>>Excelで販売管理を行う課題と、販売管理システム導入の効果とは

8.ADMANは広告業の原価計算が得意な販売管理システム

ADMANは広告業に特化した販売管理システムなので、広告業の原価計算も得意としています。複数の原価を登録することができ、原価を1:1ではなく、1:nで登録することができます。原価には仕入の他に稼働や経費も紐づけできるので、正確な案件の収支管理が実現できます。さらに発注予定の段階から登録ができるため、見積もり段階から登録し、収支を見ながら発注業務を行うことができます。

>>ADMANの原価管理機能はこちら

9.販売管理システムで原価計算を行った事例

ADMANを導入した株式会社エイチ・アイ・エス デザインアンドプラス様より、原価計算の効果を教えていただきました。

株式会社エイチ・アイ・エス デザインアンドプラス 総合広告
【ADMAN導入効果】
ADMANの基本機能は全て使用していますが、営業担当者に経理的な意識を持ってもらえるのが良いです。具体的には制作系売上・媒体系売上ともに、個々の売上明細毎での収支管理が可能な仕組みなので、売上だけでなく原価にも意識を向けることができます。
結果、各担当者が収益を意識した案件管理を行えています。
また、蓄積されたデータの中から、欲しい情報をすぐに抽出・活用できるところも重宝しています。

営業担当者は売上を意識することはあっても、原価まで気を配ることはなかなか難しいことかもしれません。その理由は業務の忙しさではなく、実は目に見えていないだけなのかもしれません。

原価計算を正しく行い、売上と合わせた収益を可視化することで、収益への意識を高めることができるでしょう。

>>ADMANの売上/原価管理機能の詳細はこちら

10.まとめ

原価計算は、製品やサービスにかかる「原価」を計算することで、企業の経営戦略や利益確保に欠かせない重要な役割を果たします。広告業界では、プロジェクトの収支管理が複雑なため、正確かつスピーディーに原価計算を行うことが利益向上の鍵となります。
本コラムでは、5つの原価計算の種類と、広告業における効果的な原価管理の方法を解説しました。

広告業の原価計算はプロジェクト単位で進行する業態のため、労務費や媒体費用、業務委託費といった複数の費目を詳細に分け、部門別に管理することが求められます。
例えば、案件に関わる社員の福利厚生費や外部の専門業者への請求額、間接費用など、正確な原価計算を行うには書類やデータを整理し、各プロジェクトの収支を可視化することが重要です。

しかし、Excelでの管理では、入力の手間やデータの破損リスクなどがあり、正確な原価計算には限界があります。
そこで、販売管理システムの導入が有効となります。ADMANのような広告業に特化したソフトウェアは、案件ごとに売上高や売上原価、利益率を簡単に把握できるため、部門ごとの収益管理や配賦計算を効率的に行えます。
また、マスタ機能によりデータの入力ミスを防ぎ、分析業務も自動化することで、プロジェクトの進行状況に応じたコスト管理を実現します。

実際、ADMANを導入した株式会社エイチ・アイ・エス デザインアンドプラスの事例では、各営業担当者が原価に対する意識を持つようになり、売上原価や利益率の向上に成功しました。収益性への意識を高めることで、各プロジェクトの効率的な進行が可能となり、最終的には全社の利益向上に繋がります。

正確な原価計算の導入により、広告業においてもプロジェクトの赤字を防ぎ、効率的な業務プロセスを構築することができます。
導入事例からもわかるように、販売管理システムの導入は業務の効率化と生産性向上に大きく影響を与えます。広告業に適した原価管理ソフトを使うことで、原価計算の流れを最適化し、利益率を高めていきましょう。



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